Chi2eseメンバーの生態(1):日中間を “反復横跳び” する中で確立された華人アイデンティティ

華僑・華人、そして日中ハーフと一口に言っても、実際には多種多様なアイデンティティの形が存在します。

Chi2eseニュースのWebサイトオープン一発目の企画として、編集員たちのアイデンティティに関する物語を全3回の連載でお届けします。彼らの物語を通じて、私たちのChi2eseニュース立ち上げにかける熱い想いを感じ取っていただければ幸いです。

連載第一弾として、日本で生まれ中国と日本の両方で育った中国人で、中国の政治・社会に関する鋭い洞察で知られるソンミ(@SonmiChinaの物語をお届けします。

「日本生まれの中国人」

「孫弥」の名でツイッターをやっているソンミです。

 

プロフィールでは「日本生まれの中国人」という一言で済ませていますが、さらに言えば「日本で生まれたのち、日中間を高速で往復しまくった中国人」になります。

親の仕事の関係で小学生までは1年おきに日中を転々とし、
小学校は中国、中学校は日本、高校は中国、大学は日本・・・
と、もはや国家を跨ぐ反復横跳び

累計で言えば、日本が13年と中国が10年になります。

そのお陰で日中ともにネイティブ並に話せるようになりましたが、当然ながらつらい経験もたくさん・・・

さらに、高校の一部はアメリカに海を超えて棒高跳び(留学)し、その姿はさぞセワシなかったことでしょう。

この経歴を人に言うと基本的に「羨ましい」「華やかだ」と言われます。

しかし、本当に「華やか」なのだろうか?

僕は、どこまでも泥臭い生き方だったと感じています。

「小日本って言うな!」中国の愛国主義教育にどっぷりの小学生時代

「红领巾小红花というものはご存知でしょうか。

画像にある「红领巾」は中国の小学生ならだれもがつけなければならない赤いスカーフで、これは「革命戦士の血糊に塗られた国旗の一角」と例えられているんですね〜

グロい?いいえ。「革命戦士の血糊」なのでグロくありません。神聖です。革命戦士のものですから。

祖国を守ってくれた人たちの血糊を首に巻きつけてもグロくもなんともありません。

 

なんならこれをつけて、毎週一回校庭で全校生徒で国旗掲揚を見つめながら国歌を歌うんですから。

なんと美しい…(恍惚)

 

こんな状態でした。小学生の頃は。
それはもうぼくだけじゃなくて、多分全校生徒が。

みんなが同じ血糊スカーフを首に巻きつけて国歌斉唱するわけですから、一体感がすごいですよね。所属欲求が満たされ、大きな使命感に燃えるわけです。祖国の振興のための。

そして、この素晴らしい感情をどう維持するかといえば、小红花の出番です。

これは簡単に言えば「良いことをするともらえるご褒美のステッカー」というもの。

みんなはコレのために頑張るわけですね。愛国的な事を言うともらえたり、他の生徒の悪行を先生に密告すると貰えたりします。

そして、何か悪いことをしたら剥がされます。みんなの前でスゴイ雑に剥がされます。そして剥がされた子は泣きながら反省の弁を述べるわけですね。

なんてディストピアな素晴らしいシステムでしょうか。

もらっても剥がされても一銭の損得にもならないですが、単純な子供たちはこの単純なアメとムチのシステムで愛国的に育つわけなんですね。

僕もそんな愛国的少年の一人だったのでした。

 

そんな愛国的な少年だっからこそ許せなかったこと。

それは僕が日本で生まれたことを引き合いに出して「小日本!」とか罵ってくる輩たちですね。

僕はこんなにも愛国的なのに!!ヽ(`Д´#)ノ ムキーーー!!
と毎回怒っていましたが、ついには止みませんでした。

日本の「いじめ」とは全然レベルが違いますが、まあ子供にありがちな嫌がらせですよね。

「毒餃子って言うな!」日本に来て揺らぐ自信とアイデンティティ

中学校では、日本に来ました。

その間に日中間では何が起こったかというと
こんなことや…

こんなこと…

そしてこんなことも…

日本の嫌中感情が戦後もっとも悪いと言われていた時期でした。

ツイッターでは今でも僕が「被害者意識が強すぎる」という人がいます。

確かに被害者意識は強いかもしれません。

しかしそれは、世論調査で国民の八割が「中国に親しみを感じない」と答えていた時期に、多感な中学時代を過ごしていたからではないかと思いっています。

80年代に日本に来て、すでにコミュニティを形成した華僑にはわからない、二世の苦しみがここにはあるのです。

それは、アイデンティティを形作るそんな時期において、周りのほとんどの人が「君の出身国家はダメだ」というイメージを持っている時の不安感です。

それは中学校においても同じでした。

確か当時は「中国産毒餃子事件」がまだ記憶に新しかった頃。
日本に来て開口一番「お前毒餃子食ってるだろ」と言われた時のショックたるや…

結局学校では馴染めず、いじめられたり、喧嘩したりしていた日々でした。

字数の関係で過程の方は割愛しますが、一度転校し、途中も色々あって、
結局は徐々に日本に適応していって、いじめられることもなくなりました。

しかし、その適応の過程で失ったものもあります。

 

それが小学生時代に持っていた自国に対する自信と、確固たるアイデンティティでした。

アイデンティティが否定される…

多くの人はこんな経験はあまりしないと思います。
その苦しみは、結構なものです。

そこから、新しいアイデンティティの模索が始まったように思います。

「僕は中国人」から「僕は華人」へ

その後、高校にまた中国に帰ったり、アメリカに行ったり、大学でまた挫折したりで大変でしたが、その過程で、自分は本当に中国人なのか?と疑うようになりました。

中国人の定義、それは国籍だけではなく、その人のアイデンティティに由来するものであると思っています。

そして、少なくとも、僕のアイデンティティはすでに、小学校の愛国主義教育が教えていた「中国人のあるべき姿」とは程遠いものでした。

それは差別の中生きてきたことも当然ながら大きく影響していると思います。

自己認知は他人の自分に対する反応のリフレクションの中で形成されるとすれば、
中国出身と言うだけで冷ややかな目線で見られた中学生時代は紛れもなく僕の自己認知を大きく歪ませたのでしょう。

 

そして、もう一つ理由があります。

それは、自分が長年教えられてきた「正しい中国の政治と歴史」が、実のところそこまで正しくもなかったと知ったことでした。

当然それらは差別によってではなく、自分の国について、ルーツについて学び、考えた結果と言えます。

この記事ではそこまで深くは立ち入りませんが、愛国主義教育に大きな疑問符を抱くようになったのでした。

「@SonmiChina」

ご存知の方も多いと思いますが、
僕はツイッターで中国関連の情報発信を行っています。

このアカウントです。

 

「ソンミ」は、映画「クラウドアトラス」の中の「ソンミ451」というキャラクターから取ってきた名前。

映画の中でソンミ451はクローン人間として世界に革命を呼びかけます。クローン人間に対する弾圧に対して、立ち上がるように呼びかけるのです。

僕は革命を起こそうだなんて考えていませんが、
ソンミ451のように声が沢山の人に届くことを願ってアカウントを作りました。

それは、僕のアイデンティティに関するもの、
僕の中国への感情とか考えに関するものなど様々です。

そして、一人でも多くの人にその声が届くように、努力してきたつもりです。

その過程で色々ありました。

炎上したり、色んな立場の人から罵倒されたり。
「日中の遺棄物」なんか言われたりもしました。

しかしそれも、今や自分だけではなくなりました。

今や僕だけではなく、皆さんが読んでいるこのサイト、そしてツイッターアカウントを擁するChi2eseニュースに、発信の使命は託されているように思っています。

「日中の遺棄物」だと思いたい人はそのまま思っていればよいですが、
その「遺棄物」たちは、自分で思考し、自分たちで新しいアイデンティティと紐帯を作れろうとしています。

国家をアイデンティティの根幹として置かないといけないだなんて誰が決めたのでしょうか。

自分たちのアイデンティティを決めてはいけないというルールなんてありません。

 

最後に

連載第一弾では、日本と中国の双方で生活する中でアイデンティティに関して思考し続け、そこで養った独自の目線から発信活動を行なっているソンミの物語をお届けしました。

Chi2eseニュースでも、彼の中国に対する洞察を活かしたコンテンツを、今後もどんどん配信していければと思います。

第二弾では、日本で育った中国人しゃんいYiYiが、青年時代に抱いた葛藤と大学生活を通してそれを克服し、Chi2eseニュースに参画するまでの物語をお届けします。

執筆:ソンミ
監修:Chi2ese NEWS編集部

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